++English七転八倒++

「これって英語でどう言うの?」な毎日の備忘録

箱としての家は心が帰るべき場所になり得るか 小説:The Dutch House

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by Ann Patchett
舞台の始まりはペンシルベニアの古い豪邸「The Dutch House」主人公のお父さんが投機的な不動産ビジネスで成功し、初めて家族のために買った家が緩やかにそして決定的に家族を崩壊へと導いていきます。表紙の絵は、語り手のお姉さんの肖像なのですが、これに影響されて、最初の一章は、物語の進行役、「I」 は女性だと思い込んでしまいました。しかしやはり物語の主人公は語り手のお姉さんであり、彼女は悲しいほどにかつて存在していた家族の象徴であるこの家に固執しています。

この物語はハッピーエンドかどうか判断するのは難しいですが、ただただ誰かの長い人生のようにいくつかのドラマを経て終わりを迎えます。

60年代、70年代に青春時代を送った女性が出てくるアメリカの小説を読んで感じるのは、彼女たちの自己肯定感が思った以上に低いんだなぁ、ということです。この表紙の絵に描かれている語り手の姉はとても優秀で当時学校の数学のクラスでもいつもトップだった女性なのですが、自分のキャリアにはあまり興味がなく、弟の幸せのために力を尽くし続けています。アメリカでもウーマンリブのムーブメントが起こったのは60年代、70年代であり、この時代は過渡期だったのかなぁ、と歴史を後追いする意味でも面白いお話でした。

オーディオブックはトム・ハンクスが読んでいます。私のブッククラブの人たちはそれがボーナスだと言っていましたが、私にとっては早口で聞き取れないところがいっぱいあって、そういう箇所は結局本を読み直してようやく理解できるような状況でした。とほほ。ただ、どのシーンがドラマティックなのかは声のトーンでとってもよく分かりました。なのでネイティブイングリッシュで全然OKな方は是非、オーディーブックをお試し下さいませ。